研究概要

小阪憲司博士(横浜市立大学名誉教授)は1980 年にレビー小体病(Dementia with Lewy bodies; DLB)を提唱した。レビー小体病は進行性の神経精神疾患であり、「臨床的には初老期または老年期に、ときにはより若年に発症するパーキンソン症状によって特徴づけられるが、後に認知症を伴うこともある。症例によっては進行性認知症が先行することもある。神経病理学的には、中枢神経系における多数のレビー小体の存在とその好発部位における変性によって特徴づけられる」と定義した(レビー小体型認知症の診断と治療、小阪憲司編、harunosora社)。パーキンソン病を含むレビー小体病治療において、αシヌクレインの凝集体形成と神経細胞における封入体形成が特徴であるが、そのメカニズムは不明である。私達は脂肪酸結合蛋白質(FABP)がαシヌクレインの凝集体形成を促進することを発見し、その阻害薬(リガンド)が凝集体形成を抑制することを実証した。本研究ではFABPリガンドの治療薬、イメージングプローブとしての開発を行う。さらに、FABP の診断マーカーとしての臨床的有用性を5年以内に確立する(図)。

早期診断技術と根本治療薬の開発ロードマップ

研究内容

①FABPリガンドの非臨床Proof of concept (POC)取得については化合物の構造最適化と急性毒性試験および定量バリデーション法を確立して、反復投与試験、一般毒性試験にて安全性を確認する(東北大学)。
②レビー小体病モデルマウスを確立し、αシヌクレイン凝集体形成および伝播に対するFABPリガンドの阻害機序を解明する(東北大学と鳥取大学)。
③レビー小体病患者の病理解析と診断技術を確立する(国立病院機構仙台西多賀病院)。
④レビー小体病患者脳のαシヌクレインをイメージングするプローブを開発する(東北大学)。
⑤FABPリガンドのマイクロドーズ試験と臨床治験第1相を実施する。
⑥5年以内に企業へのライセンスアウトを行う。